Windows11が発表されてから、TPM 2.0やセキュアブート対応など厳しいシステム要件に悩まされている方も多いのではないでしょうか。特にCPUの世代制限は大きな壁となっています。
今回の記事では、Windows10がインストールされたCore i5-6500(第6世代CPU・Windows11非対応)のデスクトップパソコンから、Windows11対応のRyzen 5 5600Gを搭載したデスクトップパソコンへSSDを移行し、Windows11へアップグレードできるかどうかを検証します。
今回の検証ポイント
この実験では、以下の2つを検証します:
- 古いパソコン(Core i5-6500)からSSDを取り外し、新しいパソコン(Ryzen 5 5600G)に移し替えた時、Windowsは自動認識するか
- 移行後、Windows11へアップグレードできるか
使用機材
元のパソコン構成(Windows11非対応)
- CPU: Intel Core i5-6500(第6世代)
- メモリ: DDR4 16GB
- ストレージ: Windows10がインストールされた128GB SSD
新しいパソコン構成(Windows11対応)
- CPU: AMD Ryzen 5 5600G
- マザーボード: ASUS B550チップセット
- メモリ: DDR4 16GB
実験手順
1. SSDの移行
まず、元のパソコンからSSDを取り外します。この作業はデスクトップPCであれば比較的簡単です。SATAケーブルと電源ケーブルを外し、必要に応じてネジを外してSSDを取り出します。
次に、取り外したSSDを新しいパソコンに取り付けます。SATAケーブルでマザーボードに接続し、電源ケーブルも忘れずに取り付けます。
2. 起動とドライバの自動インストール
新しいパソコンの電源を入れると、Windowsが起動します。最初の起動では、新しいハードウェア構成を検出して自動的に調整が行われます。しばらく待つと、自動的にドライバのインストールが始まります。
実は、Windowsはこのようなハードウェア変更にある程度対応できるよう設計されています。特にマザーボードとCPUの変更は大きな変更ですが、Windows10は柔軟に対応し、必要なドライバを自動的にインストールすることができるのです。
デバイスマネージャーを開いてドライバの状態を確認したところ、すべて正常に認識されていました。また、ライセンス認証についても確認したところ、きちんと認証されていました。
3. Windows11へのアップグレード
ハードウェアの準備ができたので、いよいよWindows11へのアップグレードに挑戦します。「設定」を開き、更新とセキュリティを選択すると、「Windows 11へのアップグレード」の案内が表示されます。
もし表示されない場合は、Microsoft公式サイトから「パソコン正常性チェックアプリ」をダウンロードして実行し、パソコンがWindows11の要件を満たしていることを確認します。
今回のパソコンはWindows11の要件を満たしていると判定され、アップグレードが可能になりました!これは、マザーボードとCPUの交換によって、TPM2.0、セキュアブート、そして対応CPUという主要な要件をクリアできているためです。
Windows Updateのところからアップグレードを開始すると、通常のWindows11アップグレードプロセスが始まります:
- 更新プログラムのダウンロード
- インストール
- 再起動
- 設定の引き継ぎ
そしてしばらくすると、Windows11が無事インストールされました!
CPUがRyzen 5 5600Gで、Windows11がインストールされていることが確認できます。以前のアプリやファイルもそのまま引き継がれており、アプリの起動も問題なくできました。
検証結果とまとめ
この実験から分かったことをまとめましょう:
- Windows 10がインストールされたSSDを全く異なるCPUとマザーボードを持つパソコンに移行しても、Windowsは自動的に新しいハードウェアを認識し適応することができる
- CPUの世代が原因でWindows11にアップグレードできなかったパソコンでも、対応CPUとマザーボードに交換するだけでWindows11にアップグレードできる
- この方法のメリットは、すべてのアプリケーションやデータを保持したままWindows11に移行できることです
ただし、注意点として、大きなハードウェア変更後はライセンス認証が必要になる場合があります。また、マザーボードによってはメモリの変更が必要になる場合もあります。
デスクトップとノートパソコンの違い
デスクトップパソコンの場合
デスクトップパソコンの大きな利点は、部品の入れ替えである程度までWindows11対応が可能になることです。Windows11に対応したパソコンにするには、パソコン全てを交換するのではなく、CPUとマザーボードだけを交換すれば良いのです。
これにより、メモリやストレージ、電源ユニット、ケースなどの既存部品を再利用でき、かなりのコスト削減になります。
ノートパソコンの場合
一方、ノート型パソコンの場合は、部品の入れ替えでは対応できないことがほとんどです。ノートパソコンはデスクトップと違い、CPUとマザーボードの交換はほぼ不可能な設計になっています。
マザーボードは筐体に合わせて特注設計されており、市販の規格品ではありません。また、多くのノートパソコンではCPUもマザーボードに直接はんだ付けされているため、交換そのものが物理的に不可能です。
このため、ノートパソコンの基板とCPUは交換不可能といえます。残念ながら、ノートパソコンでWindows11の要件を満たさない場合は、ほとんどの場合、新しいノートパソコンへの買い替えということになってしまいます。
まとめ
今回の検証で、Windows10がインストールされたデスクトップパソコンのSSDを、Windows11対応のCPUとマザーボードを搭載したパソコンに移し替えることで、Windows11へアップグレードできることが確認できました。
デスクトップパソコンの場合、古いパソコンをWindows11に対応させたい場合、完全な新規構築よりも、このような部分的なアップグレードが効率的な選択肢となります。特にアプリケーションの再インストールやデータ移行の手間を省けるのは大きなメリットです。
一方、ノートパソコンの場合は構造上の制約から部品交換での対応が難しく、Windows11へのアップグレードを希望する場合は、新しいノートパソコンの購入を検討する必要があります。
皆さんのWindows11アップグレード計画の参考になれば幸いです。