
2026年ワールドカップを見ていて、こんなことを思ったことはありませんか?
「なんであんな一瞬のオフサイドが分かるんだろう?」
以前であれば、オフサイド判定は副審の目が頼りでした。しかし現在のワールドカップでは、最新のAI技術やセンサー技術、映像解析技術が活用されています。
実は今のワールドカップ公式球にはセンサーが内蔵されており、毎秒500回ものデータを送信しています。
さらにスタジアムには16台の専用カメラが設置され、AIが選手1人につき29か所のポイントを追跡しています。
皆さんが見ているVARは、もはや単なるビデオ判定ではありません。
巨大なリアルタイムAIシステムなのです。
今回は2026年ワールドカップを支えるIT技術について、VAR、AI、コンピュータービジョン、ボールセンサー、そしてLinuxとの関係まで、分かりやすく解説します。
VARは映像を見返しているだけではない

VARは「Video Assistant Referee(ビデオ・アシスタント・レフェリー)」の略称です。
映像を見ながら主審をサポートする仕組みとして導入されました。
多くの人は、
「VARって映像を見返しているだけでしょ?」
と思っているかもしれません。
確かに初期のVARはそれに近いものでした。
審判がモニターを見ながらスロー再生を確認する。
そんなイメージです。

しかし現在のVARは大きく進化しています。
システム内部では、
- スタジアム内の映像データ
- ボールセンサーのデータ
- 選手の位置データ
がリアルタイムで統合されています。

ITの世界では、このような技術を「データフュージョン」と呼びます。
自動運転車がカメラやGPS、レーダーを組み合わせて周囲を認識するのと同じ考え方です。
現代のVARは、映像判定というよりもリアルタイムデータ解析システムに近い存在になっています。
2026年大会では映像技術の活用範囲も拡大
近年のサッカーでは、より誤審を減らす方向へ進化しています。

従来のVARは、
- ゴール判定
- PK判定
- 一発退場
- 人違い
が中心でした。
しかし現在では、コーナーキック判定などでも映像技術が活用される場面が増えています。
映像解析技術の進化によって、試合の公平性はさらに向上しています。
SONYグループが支えるワールドカップ
実は、この技術には日本企業も深く関わっています。
皆さんは「ホークアイ」という名前を聞いたことがあるでしょうか。
テニスのライン判定システムで有名な企業です。
ボールがラインの内側だったのか外側だったのかを高精度で判定する技術を開発しています。
現在、このホークアイはSONYグループの一員です。
つまりワールドカップの重要な判定技術の一部を、日本企業グループが支えているのです。
ホークアイが得意としているのは「コンピュータービジョン」です。
コンピューターに映像を理解させる技術で、
- 顔認識
- 監視カメラの人物検出
- 自動運転の歩行者認識
などにも使われています。
テニスで培った映像解析技術が、現在はサッカーにも応用されています。
オフサイド判定CGはどう作られているのか
VARで表示されるオフサイド判定CGを見たことがあると思います。

実はあのCGは、人間が手作業で作っているわけではありません。
スタジアム内のカメラやボールセンサーから取得したデータを元に、コンピューターが自動的に3D空間を再現しています。
ゲームエンジンやCG制作にも近い技術です。
だからこそ、数秒後には分かりやすい判定映像を表示できるのです。
SAOTとは何か

現在使われているオフサイド判定技術は、
SAOT(Semi-Automated Offside Technology)
セミオートメイテッド・オフサイド・テクノロジーと呼ばれています。
まずスタジアムには16台の専用カメラがあります。
テレビ中継用ではなく、選手追跡専用のカメラです。
初期のSAOTでは12台でしたが、現在のFIFA公式システムでは16台のカメラが利用されています。
選手は29ポイントで追跡されている
AIは選手1人につき29か所のポイントを追跡しています。

例えば、
- 頭
- 肩
- 肘
- 手首
- 腰
- 膝
- 足首
- 足先
などです。
ゲームをする人なら分かりやすいかもしれません。
コンピューターの中では、選手が3Dキャラクターとして存在しているような状態です。
しかもこれを毎秒50回更新しています。
試合中は22人の選手がいます。
22人 × 29ポイント × 50回
つまり約31,900ポイントものデータを1秒ごとに処理していることになります。
ボールの中にはIMUセンサーが入っている
ワールドカップ公式球にはIMUセンサーが内蔵されています。

IMUとは、
Inertial Measurement Unit
(イナーシャル・メジャメント・ユニット)
日本語では慣性計測装置と呼ばれます。
スマートフォンを傾けると画面が回転しますよね。
あれと似た仕組みです。
加速度センサーやジャイロセンサーによってボールの動きを検知しています。
さらにこのセンサーは毎秒500回もデータを送信しています。
なぜボールセンサーが必要なのか
理由はオフサイド判定です。

オフサイドは「ボールが蹴られた瞬間」の位置関係で決まります。
もしその瞬間を0.1秒間違えれば、判定が変わる可能性があります。
映像だけでは、
「このフレームかな?」
という曖昧さが残ります。
しかしセンサーがあれば、ボールに力が加わった瞬間をデータとして取得できます。
そのため、いつ蹴られたのかを非常に正確に特定できるのです。
AIは審判ではない
最近は何でもAIと言われます。

しかしAIが勝手にオフサイド判定をしているわけではありません。
AIの役割は、
- 選手の位置計算
- ボール位置の追跡
- パスの瞬間の検出
- オフサイド候補の検出
です。
AIは「この場面はオフサイドの可能性があります」と審判に通知します。
最終判断をするのは今でも人間の審判です。
だからこそ、この技術は「Semi-Automated(半自動)」なのです。
ITの世界では、
Human in the Loop(ヒューマン・イン・ザ・ループ)
と呼ばれる設計思想があります。
人間をシステムの中に組み込み、AIと協力して判断する仕組みです。
VARもまさにその考え方で設計されています。
Linuxも活躍しているかもしれない
これだけのシステムを動かすには、
- 16台のカメラ映像
- 毎秒500回のボールデータ
- 選手の骨格追跡
- AIによる解析
をリアルタイムで処理しなければなりません。
映像解析やAI処理の世界ではLinuxが広く利用されています。
理由は、
- 安定性が高い
- 高速である
- カスタマイズ性が高い
- AIやクラウド技術との相性が良い
からです。
もちろんワールドカップのシステム構成がすべて公開されているわけではありません。
しかし、このような大規模AIシステムではLinuxが採用されるケースが非常に多いのです。
皆さんが普段使っているUbuntuやDebian、Fedoraなども同じLinuxファミリーです。
自宅で使っているLinuxと世界最高峰のスポーツイベントが、意外と同じ技術の延長線上にあると考えると面白いですよね。
まとめ
現代のワールドカップは、単なるサッカー大会ではありません。

その裏側では、
- SONYグループ傘下のホークアイ
- 16台の専用カメラ
- 29ポイントの骨格追跡
- 毎秒500回のボールセンサー
- AIによるリアルタイム解析
- Human in the Loopによる判定支援
といった最先端技術が活躍しています。
コンピュータービジョン、IoT、センサーフュージョン、AI、クラウド技術。
まさに現代ITの集大成とも言えるシステムです。
次にワールドカップを見るときは、ぜひVARの画面にも注目してみてください。
その裏では、世界最先端のITシステムがフル稼働しています。



