商売を怠らずひたすら稼ぐことが、この世の勤めである。

 「人は少しでも金のある時に、財産を増やすことを心掛け、商売を怠らずひたすら稼ぐことが、この世の勤めである。
 金のある時は油断して、欲しいものを買い、派手にしたい放題のことをして、たちまち財産を遣い果たし、その時になって慌てふためき、嘆いてももはや商売の手立てもなく、倹約すへき財産もなくなっている。 こうなってしまっては、乞食にでもなるほかない。このような愚か者に、人を使うことなどできない。金のある時にも稼ぎ、財産を増やすことを、車の両輪のように心掛けることが大切である。
 いかに倹約して、せっせと袋に物を詰めようとも、人間は衣食を整えなければならず、その時には取り出して使わない訳にはいかない。武士には領地があるが、商人は商いで儲けるしかないのだ。
 しかし、いかに稼いで袋に詰めても、無駄遣いをしては、たちまち空になってしまう。それでは底の抜けた袋に物を入れたのと同じことだ。
 このことを理解することが、肝心である」             島井宗室遺書




顧客満足経営
近江商人は、始末して勤勉に働くだけではなく、「売り手よし、買い手よし、世間によし」の「三方よし」で商いに励み、陰徳を積んだ。これこそが、お客様の満足を追求することにより企業の永続的発展を目ざす「顧客満足(CS)経営」の源流であり、世界に誇ることのできるビジネスモデルである。

CS(顧客満足)経営をテーマに企業・地方自治体で指導。現在は、(社)日本経営協会専任講師、千葉県生涯大学校・統括講師として活動。著書は「先進11社にみる顧客満足経営」「江戸商人の経営哲学」など。

近江商人に学ぶ
「長者に二代なし」と言われた江戸時代、その多くは一代で没落した。その一方で、老舗として何代も続いた店も少なくない。なぜ、そのような違いがでたのか。金儲けがうまかったからなのか、それとも金儲けのためには手段を選ばなかったのか。
その疑問を解いてくれるのが、江戸時代の豪商である。なかでも、伊勢商人とならび称された近江商人の生き方は、私たちに大きな示唆を与えてくれる。